【状況】
不動産の所在:東京都練馬区南大泉 ご相談者のお住まい:神奈川県横浜市中区 種別:中古一戸建て 利用状況:空き家 |
今回のご相談者様は、空き家となったままのご実家を売却したいといったご希望のご家族です。
ご相談者様のご両親がお住まいだったのですが、お父様がお亡くなりになったタイミングで、お母様がご自身の家の近くに引っ越して来られたため、ご実家が空き家となっている状況でした。
兄弟がいるものの、それぞれ家庭もあり持ち家も所有しているため、将来的に誰もご実家を利用する予定がありません。
そのため、年に1回~2回程度、室内の空気の入れ替えと草刈に行く程度です。
もちろん実家ですので思い入れはあるのですが、維持費と手間を考慮した結果、売却を検討する方針となりました。
1【現状の把握】
1-1所有者の確認
本件はお父様が単独所有として所有者として登記されておりました。
そこで、相続については、法定相続通りに相続される方針となりました。
1-2相続の方針決め
不動産の売却時には、亡くなった方の登記のままでは売却ができないので、相続登記を行う事が必須です。
法定相続通りに登記をするのか、もしくは、相続人の間で協議をして、共有ではなく相続人の内のどなたか一人に単独相続するのか、方針を決める必要があります。
空き家の状態なのか、相続人の誰かが居住しているのか、相続や売却をする場合の相続税や所得税などの複数の要素を検討して方針を決めていく事になります。
そのため、実務上では税理士の先生も交えて、関係者の意向も確認しつつ決定する事になります。
1-3相続に伴うそれぞれの持ち分
本件は法定相続なので、以下の様な持ち分で司法書士の先生に依頼をして、相続登記をいれます。
お母様:持ち分2分の1
兄:持ち分4分の1
弟:持ち分4分の1
2【売却への準備】
2-1室内の荷物の処分
空き家となっているだけで、生活をしていた荷物が残っておりました。
まずは、ご親族が思い入れのあるものや、必要なものを搬出する事にします。
思い出のある物が残されており、仕分けだけでも結構時間がかかるものです。
ある程度の荷物の選定が終わると、たいてい大きな物と細かな物が残ります。
ベット、タンス、テレビ台や、食器や書籍などがよくあるケースです。
不用品については、市区町村の粗大ゴミや、燃えるゴミ、燃えないゴミ、資源ゴミとして出すのが一番費用がかかりません。
そのため、時間の余裕やありゴミ出しが苦にならない様であれば、ご自身で対応されるのがいいのではないでしょうか。
ただ、空き家の場合は荷物が多いケースが大半なので、正直かなりの労力がかかります。
ご自身での処理が限界の場合は、必要に応じて、弊社が普段お世話になっている不用品処分の業者さんをご紹介させていただいております。
2-2確定測量の実施
土地や一戸建ての場合は、確定測量を行う事が一般的です。
土地家屋調査士や測量士へ依頼をして、隣接地の方々にもご協力をいただく事になります。
※確定測量とは 全ての隣接地との境界について隣接所有者との立ち会いをもとに境界確認を行う測量のことです。 |
土地境界には金属鋲・コンクリート杭などの境界杭が埋められ、その杭によって土地の境界が明確になります。
境界が定まっていないと明確な土地の面積がわかりません。
測量の結果、登記されている地積と、確定測量後の実測面積に差が生じる事もあります。
また測量をする事によって、隣接地の間にあるブロック塀やフェンスが誰の所有物かがはっきりします。
相続が発生し空き家になっている場合、境界や塀が曖昧で把握している人がいないケースが多々あるので、この様な場合は確定測量により明確にさせます。
2-3道路の調査
本物件は角地に位置しており、一方は公道ですが、もう一つは私道への接道です。
「公道」とは、国や自治体が所有し管理する道です。 |
「私道」とは、個人や法人が所有し管理している道となります。 |
見ただけでは、公道なのか、私道なのかの判断ができないため、区役所で調査をして判別をする事になります。
2-4インフラ設備の調査
同時に「上水道、都市ガス、下水道」が、公道か私道のどちらに埋設されており宅地内に引込がされているのか調査も必須です。
調査の結果、全ての配管は私道の下に埋設されており、宅地内に引込がされている事が把握できました。
2-5私道の状態確認
私道の場合、「私道所有者から、私道を通行することや、水道管やガス管などの引き込みで私道を掘削するときの承諾を取り付ける」といった事が非常に大切なポイントです。
本件では、私道に接している方々は全部で4名、それぞれが持ち分4分1を所有している共有状態の私道でした。
そのため、私道所有者は通行や掘削に対して、それぞれが持ちつ持たれつの関係性です。
2-6私道の通行掘削承諾
普段は意識する事はあまり無いと思いますが、不動産取引においては、事前に私道所有者から通行や掘削の承諾を得ておかなければトラブルに発展するケースがあります。
そのため承諾を得るための私道所有者へのご挨拶は慎重に対応をします。
なぜなら、次の様なケースの場合は承諾を取り付けられない事があるからです。
・私道所有者との仲が険悪
・私道所有者の所在が不明であり連絡が取れない
・通行掘削承諾書に署名捺印することに抵抗を示される
本件では、空き家となる前までの居住している期間は、近隣の方々と非常に良好なご近所付き合いをされていたため、特に問題もなくすんなりと承諾をいただく事ができました。
私道所有者の方のところへ一緒に同行し、1件ずつご挨拶にあがりましたが、皆さん非常にいい方々でしたので、とても助かりました。
2-5越境や被越境の確認
確定測量の結果、越境問題が発見される事があります。
「越境」とは、所有物が隣地に侵入していることです。 「被越境」とは、隣地の所有物が自分の土地に侵入してきている状態の事です。 |
これまで経験した越境や被越境のケースです。
・建物の一部(雨どいや庇など)
・ブロック塀やフェンス
・樹木の枝葉
・給排水管やガス管などのインフラ設備
特に空き家となっている場合、樹木が生い茂っているケースもあるため注意が必要です。
本件では、樹木が越境している状態でしたが、伐採すれば解決できる程度でしたので特に問題にはならないと判断しました。
3【売買条件の確定】
空き家に限った内容ではないですが、不動産を売却する場合は、どの様な条件で売買をするのかを予め決めておくことにより、いざ購入者が現れた段階でスムーズに進める事ができます。
・売買代金と手付金の金額
・引渡しの時期
・契約不適合責任
・住宅ローンの利用の有無とローン特約
3―1売買代金の確認
まずは一番大切な売買代金の金額の確認です。
事前に買付証明書にて購入者から提示された金額と相違がないか確認をします。
3-2手付金の設定
手付金の金額ですが、売買代金の5%前後と設定されるケースが大半です。
一般的に、不動産売買においては特別な契約の定めがない限りは手付とは解約手付のことを指します。昭和24年10月4日の最高裁判例でも手付に対してはこのように推定するとしており、契約上、手付とは原則解約手付とするのが裁判でも確定しております。
※解約手付とは 手付の一種で、手付の放棄(または手付の倍額の償還)によって、任意に契約を解除することができるという手付のこと(民法第557条第1項)。 |
もう少し分かりやすく表現すると、不動産の契約では、「売主または買主が契約の履行に着手するまでは、買主は手付を放棄し、売主は手付の倍額を返すことで契約を解除できる」としています。
3-3引渡しの時期
不動産売買では、売買契約の締結のタイミングと、引渡しの時期が異なる事が一般的です。
理由は、住宅ローンを利用して購入をされるケースが大半のため、ローンの申し込みと契約をするためには、売買契約書が必要となるためです。
そのため、実務上では売買契約から引渡しまでの期間は「約1ヶ月~2ヶ月程度」の余裕をみて設定します。
今回のケースでは既に空き家となっていたので、特に引っ越しは必要ありませんが、荷物が残っている場合は、引渡日までに撤去する必要があります。
3-4契約不適合責任
契約不適合とは 目的物が、その種類・品質・数量に関して、契約の内容に適合しないことを指します。
民法改正(2020年4月施行)により、新たに定められた内容であり、改正前は瑕疵担保責任という内容でした。
契約不適合責任とは、売買対象の不動産に、契約内容と異なる点があることが判明したときに、売主が負担する責任をいいます。
契約不適合責任における買主の権利4種類
・追完請求権
・契約解除権
・代金減額請求権
・損害賠償請求権
これらの契約不適合責任の期限は、実務上では売主が「一般個人」の場合は、3か月と設定される事が一般的です。
3-5住宅ローンの利用の有無とローン特約
一般エンドユーザーが購入される場合は、住宅ローンを利用して購入するケースが大半ですが、ローン利用の有無を売買契約締結前に確認する事になります。
※ローン特約とは 借入額の全部または一部について金融機関の承認が得られないときは、売買契約を白紙に戻せる(無条件で契約解除できる)というものです。この場合、契約時に支払った「手付金」は全額買主に返還されます。 |
ただ、特約期限が無期限の場合は売主は不安定な状況となってしまうため、ローン特約期限を買主と相談の上で区切ることになります。
そのため、売買契約書には、ローンを借り入れる金融機関名、融資額、ローン特約の期限などを明記し間違いがないかを確認する事になります。
4【媒介契約の締結】
媒介(ばいかい)契約とは、不動産会社に仲介を依頼するときに締結する契約を指します。
媒介契約には、「一般媒介契約」、「専任媒介契約」、「専属専任媒介契約」の3種類があります。
本件では、売買代金を決め「専任媒介契約」を締結して、販売開始です。
5【販売開始】
これまでの取引先等への独自のルートの紹介と、広告活動による販売を展開し、幅広い方へアプローチをします。
本件では広告をする売却活動の方針でしたが、売主様の希望によっては一切の広告をせずに購入者を募るケースも多々あります。
というのは、近隣の方や知り合いに売却しているのを知られたくないといった理由からです。
結果としては、独自ルートのお客様より、販売開始から約1ヶ月で購入申し込みをいただく事となりました。
6【売買契約と決済】
こちらに記載した売買条件を確認し、購入申し込みから1週間後には売買契約を締結しました。
空き家のため特に引っ越し作業も必要ないため、売買契約の締結から1ヶ月後には決済を迎え買主への引渡しを完了しました。
7【まとめ】
本件は、相続が発生した事により空き家の状態が継続していた物件の売却を、仲介にてお手伝いをさせていただきました。
特に売却期間の制限もなく、可能な限り高く相場価格で売却したいといったご希望があった事から、幅広く広告活動を行い売却したご相談の事例です。
そのため、本件での売却のポイントは次の4点です。
✔ 不要品として残置してあった荷物を全て処分して、きれいに掃除をする ✔ 確定測量を実施して、正確な地積と越境の有無を明確にする ✔ 私道の通行掘削承諾を関係者から取得しておく ✔ 売主としての契約不適合責任を負担する |
可能な限り不透明な部分を無くし、購入者のリスクを減少する事により、より高値で且つ早期に売却に結び付く事ができました。
株式会社未来クリエイトでは、まずはしっかりとご相談者様のご意向をヒアリングする事を徹底します。
その上で売却方法のご提案を差し上げますので、一緒に考えながら売却を進めていく事をお約束いたします。
本件の空き家売却のご相談は都内でしたが、地方の実家を相続して空き家になったまま長い間経過しているケースが多々あり、手放したいといったご相談を多く頂きます。
関東圏のみならず、全国の不動産売却をサポートさせていただきますので、まずはご相談をお待ちしております。